2016年5月28日、北海道砂川市の小学校で行われた運動会。フジテレビとUHBは、5月30日から6月1日にかけて、観覧席での保護者による飲酒、そしてそのまま自家用車を運転して帰宅する様子を放映した。
ナレーションによれば、観覧席での飲酒が許可されていると聞いた取材班は、事前に許可を得たうえで現場に入ったという。映像では、保護者が長時間にわたり酒を飲み、ハッチバック車を運転して帰宅する様子が記録された。
車両の背景には、地元ホームセンター「サンワドー」の看板。記者は「飲酒運転の車を見つけました。見失ってしまったのでナンバーだけ……」と警察に通報。
報道によれば、通報から2時間後、取材班は独自に市内を捜索。目立つ色のハッチバックを”小学校近くの住宅街”で発見し、直接接触を試みる。対応に出たのは当人の妻で、スタッフは連絡先を入手し、電話取材を実施。飲酒運転の本人に対し、記者は「昨年砂川で起きた公道レースの事故」を引き合いに出し、出頭を促すも拒否された。
直後、砂川警察署交通課のパトカーが臨場。番組は「警察は現在、任意で男性から事情を聴いている」とし、観覧席でビールを飲み干す男性の映像に「気軽な一本が悲劇を生むことも。忘れてはいけません」というナレーションを重ねて締めくくった。
この報道は社会的関心を集めた。だが、6月6日で、あの砂川市で発生した死亡事故からちょうど1年になる。
同日、同市では「飲酒運転撲滅集会」(午前10時半、ゆう)および「市民を交通事故から守る一斉旗の波運動」(午前11時半、国道12号線)が予定されていると、地元紙『プレス空知』は報じている。
あの事故だけであれば、街は悲劇を乗り越え、再出発できたかもしれない。だが、砂川市議や砂川警察署の警察官による相次ぐ飲酒運転がそれを不可能にした。
結果として、砂川市は報道のたびに過去の事件を蒸し返され、「また砂川か」と見出しに書かれるようになった。飲酒運転と結びつけられ、あらゆる振る舞いが揚げ足を取られる街。もはや「砂川」という地名そのものが、枕詞のように事件とセットで語られる。
そしてカメラの前には、語尾を吊り上げる独特の抑揚で事件を伝えるキャスター。ニュースなのか演出なのか、もはや判断はつかない。
ただ、ひとつ確かなのは、またひとつ、砂川市が「語られる」ネタになったということだ。
画像の出典 https://www.fnn.jp/posts/2019032300000005UHB
典拠元 フジテレビFNN公式サイト
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00326297.html
あの事故から1年。砂川市内ではドライブレコーダーの装着率が格段に上がった。交通安全意識の高まりというより、あの一件以降、“身を守るための採証手段”の空気が、地元ドライバーの間で静かに浸透しているようにも思えた。
驚かされたのは、砂川警察署のパトカーにすらドラレコが装備されていたこと。飲酒運転の当事者である。
高級車か否か、速いか遅いか、弱いか強いか……。
日本から消えたと思われていた「ヤンキー文化」が、今なお中空知に根付いていることが全国に知れ渡ったなかの、そうした環境変化。
これから先、オラついた予備軍たちが「以前と同じように振る舞う」ことは難しくなるだろう。無論、それは歓迎されるべき変化である。
だが、一方で、現実は皮肉だ。市内では今も、運動会帰りに普通に酒を飲み、車に乗り込む人間がいる……ちうことが知られたのが今回の報道だ。
事件を経てもなお、地元のこのような特殊な背景に変化はなかった。
ドラレコが録るのは、事故ではなく日常である。変わるべきは記録の有無ではなく、記録される中身のほうなのだと、痛感させられる。
砂川市教委、ついに飲酒禁止を通告
6月8日、ついに砂川市教育委員会が動いた。市内すべての学校行事での保護者による飲酒全面禁止の通告である。
これまで、砂川市内の公立小中学校では、運動会などの行事で保護者が酒を飲むかどうかは「校長の判断にお任せします」だった。まあ、黙認という名の放置だ。
件の番組が放映されるや、市教委は警察に問い合わせた。「あれ、本当ですか?それとも……」と。警察はあっさり「事実です」と即答。目を背けていた現実を突きつけられ、教委は急旋回。市内7校の校長を即日召集し、緊急会議の末、「行事での飲酒は禁止」と決定。ついでに喫煙も禁止。まとめて処理された。
当然ながら、関係ないと思ってた非飲酒派、つまりどこぞのスパスパ下戸ニコ珍猿も巻き添えを食らう。「は?なにそれ聞いてないし」的な、火のついたままのタバコ片手に、目は泳ぎ、手は……ぷるぷるっ、ぷるぷるっ。スパーッ。くっさ。火事起こすなよ(笑)
で、その後。放送から1週間近く経って、ようやく保護者向けに市教委が文書配布。「運動会で飲酒運転があった」と、ついに公式に認めた。
この件、ソースは北海道新聞6月9日朝刊・第2社会面「STOP飲酒運転」。それにしても、あれほど堂々と飲んで、帰りに運転して、バレないと思ってたのがすごい。いや、逆か。「バレても、何も起きない」と本気で思ってたのか。
なお、インターネット上では「運動会で保護者が酒を飲むこと」について、極めて前時代的であるという指摘が多いようだ。
「ウオッカ飲まないと凍える」
「運動会で酒飲んでる親とか見たことないぞ 」
「子供がメインの学校行事で酒飲むのがおかしい 」
「当たりめーじゃね? 」
「子供の運動会で酒盛りするとかどんな底辺な土地だよ 」
「北海道は子どもがリレーしてるところにビールの空き缶投げつけてヤジったりしてるの? 」
「別途打ち上げ設けてそこで飲めアホ 」
「(運動会に)親呼ぶなよ 」引用元 2ちゃんねる
まとめ
教育委員会が配布した「飲酒運転がありました」通知は、誰もがうすうす分かっていた事実の、遅すぎた公式見解と言えるのかもしれない。
砂川という名は、全国のテレビの前で「また飲酒運転?」と鼻で笑われる記号になってしまったのは、砂川市民や砂川の行政当事者にしてみれば、無念極まりないだろう。
「気軽な一本が、街を呪う」
そんなふうに思えた筆者である。