11月9日 砂川警察署員が飲酒運転。砂川市は事実上『飲酒運転の街』汚名返上が不可能に

2015年11月、砂川警察署に所属する地域警察官――巡査部長という肩書の男が、飲酒後にパトカーを運転しようとして摘発された。よりによって自らが取り締まる側の人間が、まさに飲酒運転を実行しようとしたのである。滑稽な騒動の一部始終とは。

この事件、報道の扱いは当然ながら道内ニュースのトップ。なかでもNHK札幌放送局の女子アナが伝える様子は実に見応えがあった。あの「……ハア?(イラッ)」という、女が相手を言葉で殴りにかかるときに発する、あの“刺すような口調”を使って、満身の正義感でもって読み上げていたのだから。

報道というよりも感情のデモンストレーションであった。

だが、怖いのはニュースではなく、その裏側にある現実である。まるで底辺チェーンの飲食店で、水しか運ばない無愛想な女子高生バイトと変わらぬ態度を、公共放送のアナウンサーが視聴者に向けて放った、その事件そのものである。

当初の北海道新聞によれば、この巡査部長は「留置管理部門」に勤務していたと報じられている。つまり、あの砂川飲酒ひき逃げ事件の受刑者――その男がまだ“容疑者”だった頃に、巡査部長が面倒を見ていた可能性があるわけだ。さすがに、地元警察らしい“円環”である。

報道によれば、巡査部長は10月末、同僚らとともに居酒屋で酒を飲み、さらに官舎に場を移してからも8時間以上の酒盛りを続けたという。まるで昭和の体育会系そのものだ。翌朝、そのままマイカーで勤務先の砂川署へと向かったというから、“公務員としての誇り”はとうに酩酊していたのだろう。

いやはや見上げた酒豪である。これくらい飲めなければ、警察という組織には居場所がないのかもしれない。飲めない男は上司の信任を得られず、酔えない男は昇進できない。実に日本的である。酒の飲み方を知らない男など、男にあらず。魅力ゼロ。まるで、滝川市で恥をさらした某飲食店店長のような話である……おっと、名前を出すのは控えておこう。

なお、同僚たちは巡査部長が翌日勤務であることを知っていたにもかかわらず、止める者はいなかったという。これもまた“組織としてのあり方”なのかもしれない。飲む自由を尊重し、転落するのも自由。いやはや、見事なチームワークである。

怖いねえ……。

11日付けの北海道新聞朝刊を読むと、巡査部長の肩書が「留置管理部門」から「留置管理係兼地域係」へと微妙に変更されていた。

筆者は警察の内情について無知であるため、このあたりの事情がよく理解できなかった。

一般的に、留置管理係といえば警務課の所属である。それを地域課と兼務することが果たして可能なのか、疑問に感じた。地域警察官とは、交番勤務やパトカーでの巡回を行う存在であり、対して警務課は庶務業務や被留置者の看守を担当する。いずれにせよ、「留置管理係兼地域係」という不可思議な肩書であるならば、この巡査部長は6月、砂川署に留置されていた古味の管理を担っていた一方で、市内を地域警察官として警らしていた可能性がある。

追記 警察の人に教えてもらったが、これは「転用勤務」と呼ばれる制度とのことだ。地域警察官を一時的に、看守や護送といった本来の業務外に配置する運用であるという。

つまり、地域の秩序を守るべき最前線の警察官が飲酒運転を行ったことにより、世間は騒然となったわけである。同僚の指摘がなければ、この巡査部長は「酒が残っていることは認識していたが、基準値以下だと思った」として、そのまま酒気帯びの状態でパトカーを運転していた可能性があるという。

階級が上であればまだしも、下の警察官が上司を指摘したのだとすれば、それはなかなかの勇気である。というのも、警察組織というのは、陰湿な人間関係やいじめが蔓延し、自殺者も多い。2018年には、日本警察史上初となる「いじめ報復射殺事件」が発生している。親族をも罵倒されるほどのパワハラを受けた部下が、上司の巡査部長を交番の中で射殺したのである。裁判ではいじめの事実が認定されたにもかかわらず、その巡査部長が二階級特進となったのは、理解を超えた話である。

さて、砂川警察署に目を向けると、6月に札幌のテレビ各局の中継車が3台も詰めかけていた。一台は向かいの寺院の駐車場に停車しており、事前に許可を得ていたものと思われる。中継車は左右からアウトリガーを張り出し、およそ20メートルはあろうかというアンテナポールを天に向かって伸ばし、準備を整えていた。

しかし、まさか彼らを逮捕した砂川警察署の、その署員自身が起こした飲酒運転事件の取材のために、再び各局が砂川に集結するとは、彼らも想像だにしなかったであろう。

2016年6月4日の砂川飲酒検問にて検問突破発生!ステップワゴンが事故現場を赤無視で逃走!さらにパトカー自損事故

飲酒運転をした砂川警察署員は書類送検後に停職3カ月の懲戒処分を受け、慣例により処分当日に依願退職している。

なお後日、砂川署のHPに「飲酒運転をすると仕事を失う」という文章が記載されていた。

「砂川市はトドメを刺された」との言葉は、11月10日付の北海道新聞に掲載された、飲酒運転防止の啓発活動に尽力してきた砂川社交飲食協会会長(65)のものである。しかし、それを刺したのがよりにもよって警察だったとは、誰も予想しなかったはずである。

なぜ刺したのか。それはわからない。だが、砂川警察署が一般市民の理解を超える行動を他にも取っていることは、どうやら間違いないようだ。

その理解し難い職務執行は、2020年の「砂川ハンター裁判」の端緒にもなっている。